肌(皮膚)
カッティングシートは素肌に貼れるのかという、とお問い合せいただきましたので実験しました。具体的な用途は聞きそびれてしまいましたが、「カッティングシートでかたどったデザインに日焼けさせる」「タトゥーシールとして使用する」が思い浮かびました。つまり一時的(長くても1日)に素肌に貼って剥がれないかを観察すれば要件は満たせると考えて実験しました。
実験条件
カッティングシートへのダメージを考えた時に、海水、波、日光(紫外線)、日焼け止め(油分)などの過酷な条件を含んだ、海水浴での使用実験が理想的だと考えましたが、これまで過去に行った実験から普通に肌に貼っても恐らく剥がれてしまうだろうと予測しました。いつの間にかカッティングシートが剥がれてゴミになることは避けるため、剥がれてしまっても回収が可能な陸地で実験することにしました。
肌にカッティングシートを貼った状態で衣服を身につけた使用状況は考えにくいため、上半身の左胸、右肩背中側、左右の二の腕の4箇所に貼り、上半身裸で行動することにしました。これで擦れが発生せず、「カッティングシートでかたどったデザインに日焼けさせる」「タトゥーシールとして使用する」の2つの要件を満せます。
日時は2025/08/03の15:30頃から日没の18:58までの3時間半。グラウンドを歩いてグルグル回り続けました。当日は15:00で37.7度、18時で35.5度だったようです(詳細)。本当は走って常に汗をかいている状態で実験したかったのですが、諸事情のため歩きのみです。
以下、動画にした歩行ログです。

貼り付け
それぞれカッティングシートを貼る前にアルコールのウェットティッシュで拭きました。急いでいたため左腕は写真を取り忘れました。
写真では少し分かりづらかもしれませんが首と両腕は既に日焼けしており、皮も一度めくれていますので、日焼けの色差が分かりづらくなりそうです。胴体は日焼けしていませんので、日焼けするポテンシャルがあります。
左胸に貼りましたがしっかり食いつかないため、慎重に転写シートを剥がさないと上手く貼れませんでした。貼った部分は多少突っ張りを感じます。
写真2枚目はわかりやすいよう少し暗めに編集しましたが、転写シート側にカッティングシートが残っているのが見えるでしょうか。左腕に貼る際に一部転写シートにカッティングシートが残ってしまいましたが、何度か押さえつけて肌側に移すことができました。この時点でカッティングシートは施工面にしっかり食いついていないことが確定しており、貼るのに適していないと判断できますが、日焼けさせるには「剥がれなければ」最低限の役目は果たせますのでこのまま実験を続けます。

自宅から上半身裸で出発すると流石に今後の私生活に支障が生じる可能性がありますので、なるべく擦れないように気を付けて服を着て自転車でグラウンドへ向かいました。
実験開始
場所は普段のランニングで通り慣れている嵐山東公園のグラウンドを選びました。観光名所の渡月橋からほど近い場所ですが観光客は一切来ず、この炎天下では人も殆どいませんので上半身裸でも問題になりません。この日も何名か上半身裸の方を見かけました。グラウンドには日陰もありませんので、今回の実験にはベストといえるでしょう。
自販機は住宅街を抜けたグラウンドから少し離れた場所にしかありません。上半身裸で自販機まで行くのはマナー違反だと思いますし、擦れが発生するため服を着るのも極力避けたいところです。そのため水分は保冷バッグに入れて1.5L持っていきました。同じくマナーの観点からグラウンド及びその周辺のみをグルグル周ることにしました。

この日は37.7度だったそうですが、上半身裸で風があたると涼しさを感じましたので、体調は全く問題ありませんでした。風が吹いたり日が陰ったりすると汗が引く場面もありました。

まだまだ始まったばかり。
経過観察
暫くしてから左胸に貼ったカッティングシートが、皮膚の伸縮に追随して動いていることに気が付きました。胸を張った時は皮膚が伸び、胸を丸めると皮膚が縮んで寄った状態になります。しかしカッティングシートは伸縮性がありませんので、皮膚の完全に伸縮に追随できず、文字間が伸縮することで皮膚の伸縮に対応していました。かなり緩めにくっついており所々浮いているので、その隙間に隣の文字が下に滑り込むような感じです。以下の動画でみるとわかりやすいと思います。

時間の経過とともに左胸に貼っている部分が痒くなってきて、一度だけ不意にカッティングシートが貼られている上から掻いてしまいましたが、カッティングシートは剥がれませんでした。両腕、右肩後ろは、皮膚の伸縮が少なく擦れが生じないからか、痒みは終始感じませんでした。
ポッドキャストを聞きながら歩いていたのですが、2時間を過ぎたあたりで飽きてしまいました。それからは我慢の時間でどこか目的地があって歩いているなら未だしも、当てもなく時間が過ぎるのを待って歩くのは精神的に堪えました。

帽子を投げて2秒間の暇潰しをすることができました。

なるべく紫外線を浴びないといけませんので、次第に大きくなる影を避けて歩いていると1,2周するころにはグラウンド一面が影になりました。日没までもう一息です。
終了間際
日が暮れて涼しさを感じてきたころ、親子連れやランナーが徐々に増えだして、急に上半身裸の自分がTPOにそぐわない格好をしているように感じ始めました。先程までは自分以外にも上裸の方々がいたので安心感がありましたが、マイノリティを意識した途端に恥ずかしさを感じ始めました。この時の望みはただ一つ、「早く終わりたい」です。
汗で勝手に剥がれてしまうだろうというのが実験前の予想でしたが、文字浮きが見られるもののすべての文字が残りました。帰ります。
剥がす
帰宅してタンクトップを脱いだ時点でいくつか文字が剥がれてしまいました。丁寧に脱いだつもりだったのですが、多少の擦れで剥がれてしまったのは、やはり実験中から文字浮きがあったことからもわかるように、そもそもどの箇所もしっかり貼り付いていなかったといえます。

右肩後ろを自分で剥がしている様子を動画にしました。軽く擦って剥がれる文字、指で摘まないと流れない文字がありました。指で摘むと抵抗なく剥がれますので、全く肌に食いついて(定着して)貼り付いていません。
日焼けの結果
写真1枚目の左胸と4枚目の右肩後ろはくっきりと日焼けさせることができました。両腕は元々日焼けしていたこともあり、日焼けの色差があまりでませんでした。しかしながらやや日の傾きかけた15:00頃からのたった3時間半でこれだけ焼けたのは意外な結果でした。
ダイソーのタトゥーシールと比較
100円ショップのダイソーでタトゥーシールを用意し、カッティングシートとの違いを比較しました。タトゥーシールは肌に貼る専用のシールですから、これまでのカッティングシートの実験とどのくらい差があるのでしょうか。
とても簡単に貼ることができました。肌に貼るときの圧着といっても少し指で押さえるだけで貼ることができます。
- 剥離紙から剥がして転写フィルム側にシールを残す
- 転写フィルムを肌に貼って圧着する
- 転写フィルムを剥がすと肌にデザインが貼られる
タトゥーシールの貼る手順は上記のとおりです。1の時点で剥離紙側にシールが一部残ってしまうことがあり、気づかずに欠けた状態でいくつか貼ってしまいました。
肌に貼られたシールはしっかりと貼り付いており、皺を寄せたりや引っ張ってテンションを掛けてみても問題なく剥がれる様子はありません。カッティングシートはこれまで紹介したように、まったく肌の伸縮に追随することができなかったため、性能が大きく異なることがわかります。

擦った様子を動画にしました。指でゴシゴシ擦ってもタトゥーシールは剥がれる様子はありません。爪で引っ掻いても全く剥がれませんでした。説明書きによるとクレンジングオイルやベビーオイルを塗り、2~3分おいてから擦って剥がす必要があるようです。
カッティングシートは指で擦るとポロポロと簡単に剥がれてしまいましたが、タトゥーシールは簡単には剥がれず、肌に貼る場合は大きく性能に差があることがわかりました。タトゥーシールでの日焼けは実験していませんが、検索する限り、タトゥーシールの形に日焼けさせることもできるようです(画像検索の結果)。
評価
肌(皮膚)はカッティングシートを貼るのに向いていない施工面です。今回、常時汗をかいていましたが水中には晒していません。しかし剥がす際の動画からわかるように、殆ど手で触るだけで剥がれましたので海水浴などで肌に貼ってアクティブに動けば、今回よりもより皮膚の伸縮の動きと水の衝撃が加わりますので簡単に剥がれてしまうでしょう。
カッティングシートは肌の伸縮性に追随できませんので、肌を動かすとカッティングシートは追随できない部分(主に端の方)が剥がれて、点で貼られたまま肌の動きに追随していているように感じました。今回のデザインの1文字が更に大きければ、肌が固定されて動かなくなり、肌に強い突っ張りを感じるだろうと思います。肌にセロハンテープを貼ると、その部分の肌が固定されて突っ張ってしまうのをイメージしてみてください。
一方、タトゥーシールは耐久性に全く問題はありませんでしたので、もし肌に貼る用途であれば、カッティングシートではなくオリジナルデザインで発注できる業者にタトゥーシールの製作依頼をすることをお勧めします。