多層構造の段差

カッティングシートは印刷ステッカーではありませんが、1つのデザインに2色以上使用して仕上げる事も可能です。単色のカラーシートをそれぞれカットし、貼り合わせて製作します。縁取りなどのデザインで2層構造になる場合はカッティングシートを重ね貼りするため、重ねたシート分の段差が生じます。それぞれ構造のページにて図解していますので合わせて御覧ください。
価格・発送:2色以上使用する
当記事の写真では以下のシートを使用しました。
- 青色:651標準シート098ジェンティアン
- 黒色:651標準シート070ブラック
- 黄色:651標準シート022ライトイエロー
651標準シートは厚みが70ミクロン(離型紙、糊を含まず)で、単位をミリメートルにすると0.07mmです。つまり非常に薄く近づいてよく見ないとわからない段差です。余程、意匠が厳格に決められている等の場合を除いて、通常は気にしなくて良い程度です。
影響のないパターン
まずは2層構造ではない1層構造で作成してアクリル板に貼ったものを紹介します。上段は単色、下段は青色と黄色の2色仕様です。2色仕様ですが「Q」と「W」は重なる部分がないため、必然的に1層構造での製作となり、貼り合わせによる段差は生じません。
拡大した写真です。このようなデザインの場合は単色での製作する時と遜色なく2色仕様でも製作が可能です。
2色仕様:1層構造と2層構造の比較
サイズは10.6cm×4.8cmです。
青いロゴに黒い縁取りをしたデザインです。パッと見た印象はさほど変わりませんが、裏からみると明らかに構造が違うことがわかります(写真4枚目)。また下段は黒色の上に青色シートを乗せているため、黒色が透けて若干、濃い青色になっています(写真3枚目)。カッティングシートは表記がない限り不透明色ですが、素材が非常に薄いため下の層の色味に影響を受けます。
これは施工面にも言えることで、例えば白い施工面に貼るのと黒い施工面に貼るとでは、貼った後の最終的な見た目がほんの僅かですが変わります。白い施工面の方が明るく見える仕上がりになります。
拡大してもあまり段差は見られませんが、裏から見ると両方で圧着ムラがあるのがわかります(写真5枚目)。この圧着ムラは再度しっかり擦ることで無くすことができます。デザインを左右反転して粘着面をデザイン正面にする場合はご注意ください。
段差の比較
かなり拡大してようやく段差があることがわかります。遠目に見た時の印象は同じ印象です。 1層構造は青色と黒色の境目が僅かに重なって青色が盛り上がっている箇所がありますが、2層構造は均一に重ね貼りされています(写真2,3枚目)。1層構造なのに盛り上がる理由は前述の「1層構造なのに段差ができる理由」をご覧ください。
背景からライトを当てた比較
ここまでの写真ではほぼズレは見られなかったと思いますが、ライトを当て確認しました(トレース台を使用)。本来、背景からライトを当てる環境では今回使用した651標準シートではなく8500電飾用シートを使用します。
ライトを当てると2層構造の方が明らかに暗く見えます。これは2層になっているため1層構造と比べて光が遮られてしまうからです。
1層構造はライトの光が漏れていますが、隙間は0.01mmほどでこのようにわざわざ光を当てないと目視ではわかりません(写真3枚目)。2層構造は2枚のシートを重ね貼りしているため、構造上、異なる色同士のズレは生じません(写真4枚目)。
カッティングシートとは:2色以上で製作する際のズレ
構造の使い分け
構造 | 見た目 | ズレ | 色味 | 裏面 |
---|---|---|---|---|
1層構造 | 綺麗 | 極僅かに生じる | 色味単色と変わらない | 表面と同じ色 |
2層構造 | とても綺麗 | 構造上、生じない | 下の色に影響を受ける | 最下層の色のみ見える |
段差は余程近くで見ない限りわからないため、基本的に2層構造で作った方が最終的な仕上がりが綺麗です。
高層ビルなどで外側から貼れない場合は、左右反転した1層構造で製作することで、内側から貼って外側から見て正面になるように作ることができます。
3色仕様:1層構造と3層構造の比較
殆どのデザインは2層構造以内で製作ができますが、使用する色数が多かったりデザインの形状や配色が複雑な場合は上図のような3層構造や、4層構造…と更に構造が重なる場合があります。
前項の2色仕様と同様に、下段の3層構造で製作した方はシートが重なって下層シートの色味の影響を受けて若干濃い青色になっています。
表面
裏面
全体の比較写真では重ね貼りによる色味に差はわかりましたが、拡大すると光の加減でほぼ色味の差はわかりません。違う言い方をすれば、その程度の色味の差です。3層構造の方を裏から見ると「QW」が薄っすらとしか見えないため、ロゴを見せる/見せないといった印象や意味合いが変わってきます(写真2枚目)。
段差の比較
かなり拡大してようやく段差があることがわかります。遠目に見た時の印象は同じ印象です。 1層構造は黒色と黄色の境目が僅かに重なって黒色が盛り上がっている箇所がありますが、3層構造は均一に重ね貼りされています(写真2,3枚目)。1層構造なのに盛り上がる理由は前述の「1層構造なのに段差ができる理由」をご覧ください。
裏面から見た写真です。写真の場所は異なります。
1層構造は裏面からでも黄色以外に青色、黒色も見えます。3層構造は1番下の土台である黄色しか見えません。表面の拡大写真でも説明しましたが、1層構造は貼り合わせの際の僅かな盛り上がり箇所がありました。このように僅かにズレが生じている部分は施工面に密着しずらいです。上の写真の中央右上あたりにある、黄色の円と黒色の円の間に色が変わっている箇所がありますますが、これが密着が甘い箇所です。
背景からライトを当てた比較
構造の使い分け
構造 | 見た目 | ズレ | 色味 | 裏面 |
---|---|---|---|---|
1層構造 | 綺麗 | 生じる | 単色と変わらない | 表面と同じ色 |
3層構造 | とても綺麗 | 構造上、生じない | 下の色に影響を受ける | 最下層の色のみ見える |
1層構造なのに段差ができる理由

カットした「Q」の先端部分を120倍程度に拡大した写真です。カットして不要な部分を取り除き、他の色と貼り合わせていない状態ですが、透明な糊のようなものが付着しているのがわかります。これはカットした際に、粘着質がカッティングシートの僅かな側面に出てきてしまっているもので、このはみ出てきた粘着質が貼り合わせの際に障害物となり、隙間なくピッタリと貼れず段差になる原因の1つです。
クワックワークスではこの粘着質は可能な限り取り除いてから貼り合わせを行っていますが、それでも僅かな段差が生じます。カットマシンの構造上回避できない極僅かなブレ、貼り合わせの際の極僅かなズレが積み重なってとして、0.01mm程度のズレが生じていると考えられます。カッティングシートを多色で製作する工程上、1層構造の場合はこの精度が限界となります。
まとめ
- 2層構造以上で製作する場合、気にならない程度の段差と色味の変化が生じる
- 配色が多く複雑なデザインは3層構造以上になることがある
- 1層構造で製作すると僅かにズレが生じるが構造上避けられない